100の科学的メソッドと
40の体験的スキルから編み出した
最高の体調
~進化医学のアプローチで、過去最高のコンディションを実現する方法~
著者 鈴木祐(すずき・ゆう)
かなり前に図書館に予約していた本。ようやく順番がまわってきました。今、読むのに必要な時期だったのかなと思います。
「肥満」「うつ病」「散漫な集中力」「慢性疲労」「モチベーションの低下」「不眠」「弱い意志力」など、バラバラのように見える問題も、根っこまで下りてみれば同じ、すべて一本の線でつながっています。その正体を暴くカギが「文明病」という考え方。文明病から脱却し、本来の自分を取りもどせるように本書で実践的に解説されています。
本当に「心」と「からだ」はつながっているのだということを、この本を通じて再認識しました。
目次
- 文明病
- 炎症と不安
- 腸
- 環境
- ストレス
- 価値
- 死
- 遊び
文明病
近代社会の変化により引き起こされる、現代に特有の病気や症状を意味します。
この「文明病」が心と体を蝕み、自己を否定する気持ちも強くなります。
不調の原因 「炎症」と「不安」
・文明病を引き起こす1つめの要素 「炎症」
炎症反応は体がなんらかのダメージを受けた時におこるもの。 大事なのは、炎症が体の表面だけに起きる現象ではない点。
例として「風邪」。
免疫システムがウイルスと戦い続け、結果として体に発熱、鼻水などの症状(体のダメージ)が起きる。熱のせいで脳が正しく機能せずパフォーマンスが低下。(体の表面以外の現象)
現代人は炎症レベルが高くなり、心と体をむしばんでいる。
・もうひとつ現代人にとって重要なのが「不安」の問題
現代の不安は「ぼんやりした不安」であり、現代人の脳のパフォーマンスとQOL(人生の質)に影響を及ぼしています。
古代と現代を比較し、「炎症」と「不安」という2つの要素が、いかに現代人のパフォーマンスを低下させるかについて解説されています。
「炎症」の問題解決
「腸」 「環境」 「ストレス」
この3つを修正して、体と脳のリセットの提示。
「腸」
済む環境、食事を変えて腸の健康の改善。
実践ガイド
腸内細菌と仲良くする
・抗生物質を無闇に使わない
・抗菌グッズや殺菌グッズの排除
・空気をきれいに保つ
腸内細菌をもてなす
・発酵食品
・プロバイオティクス
・食物繊維
「環境」
現代人への影響が大きい2つの環境。 それが「自然」と「友人」。
自然との触れ合いにより、人体の副交感神経は活性化し、自然は人類の「感情システム」に影響を与える。
また、「孤独と健康」に関する研究から人間の寿命を延ばす効果が高い要素は「良好な社会関係」。孤独な人に友達ができた場合、最大で15年も寿命が延びる傾向があったとのこと。 健康への効果もエクササイズやダイエットの約3倍。
実践ガイド
自然
・デジタルの自然を増やす
・観葉植物 (NASAが推奨する観葉植物・・・スパティフラム、ポトス、セイヨウキヅタ、キク、ガーベラ、サンセベリア、チャメドレア、ツツジ)
・公園の活用
・太陽
・アウトドア
友人
・接触時間
・同期行動
・信頼
「ストレス」
過剰なストレスで全身が壊されていく。
人体のストレスは、短期的に終わる急性のストレスをさばくのは得意ですが、現代のような慢性的なストレスに立ち向かうようにはできていない。 これを解決するには、応急処置と根本治療の2種類を使い分けていくこと。
実践ガイド
リアプレイザル (感情の筋トレ)
スピーチの直前に緊張しストレス反応が起きた時、「楽しくなってきた」「興奮してきた」と自分に言い聞かせること。
自分の感情をコントロールして、意図的に影響を与える。自分のストレスをいかに言葉や思考に変換するかで、どんな感情も再構築していくこと。
睡眠 (良質な睡眠)
良い睡眠の最低条件
1.眠りに落ちるまでの時間が30分以内
2.夜中に起きるのは1回まで
3.夜中に目が覚めた場合20分以内に再び眠るころができる
4.総睡眠時間の85%以上を寝床で使っている
メラトニン
メラトニンは体内時計をコントロールして、自然な眠りに誘うホルモン。
アウトドアで過ごす時間が長いほど、メラトニンレベルの改善効果は高い。
昼寝
空軍パイロットを対象にしたNASAの研究結果で、1回40分の昼寝でパフォーマンスが34%回復、注意力は100%完全回復などを見せる、睡眠負債のダメージを防ぐ効果が確認されています。
ウォーキング
ウォーキングを行うとコレステロールや血圧が下がり体重も減る。しかし、それらのメリットを合わせても、ウォーキングが心疾患に効く理由の59%しか説明できない。残りの41%は、ウォーキングがストレス反応を改善してくれるからだろう。
運動がストレスに効く理由は諸説ありますが、もっとも有力視されているのは「エクササイズが体のストレス対策システムを鍛えてくれる」という考え方です。
デジタル断食
「デジタル環境」をコントロールして、集中力低下や、コミュニケーションの質を下げるのを防ぐ。
「不安」の問題解決
「価値」 「死」 「遊び」
この3つに焦点をあて、現代人が陥りがちな心理的トラップを逃れる方法が考えられています。
「価値」
ぼんやりした不安を解消する方法、「未来を今に近づける」
未来との心理的距離が近いほど不安に強く、セルフコントロール能力も高い。
不安に立ち向かうには、自分の「価値観」を見定めること。
実践ガイド
・パーソナルバリューテスト
・価値評定スケール
・パーソナルプロジェクト分析
・ジョブクラフティング
「死」
現代人は、いつ訪れるかもわからない「遠い死の予感」に対して無意識の不安を募らせています。そして死の不安を減らすためのキーワードが、「畏敬」と「観察」
実践ガイド
畏敬
・自然
・アート
・カリスマ
観察
・タイガーマスク
・マインドフルネス
・マインドフルイーティング
「遊び」
現代人の問題を解決すのに、人生のあらゆる面を「遊び化」していく必要がある。
実践ガイド
ルール設定
・自然
・下位プロジェクト分析
・インターバル設定
・3つのルール
・イフゼン・プランニング
フィードバック化
・自然
・作業トラッキング
・アカウンタビリティチャート
・メタ認知
エピローグ
「最高の体調」を手にいれるための第一歩
最期に本書の弱点が記されています。
それは、人間の脳と体が、決して私たちを幸福にするめにはデザインされていない、という点です。
ここで示したのは幸福への道筋ではなく、遺伝のミスマッチが引き起こした「不要な苦しみ」を減らすための方法論です。
(一部省略)
それぞれの立場が違えど、遺伝子が定めるルールのなかで幸福を最大化させるには、「抜苦与楽」が最適解なのでしょう。もし本書の「文明病」というアイデアであなたの問題が改善したら、次は友人を助け。さらに周囲の人まで広げていってください。
かつて学生から「人間はなんのために生きているのか?」と質問されたアインシュタイン博士は、こともなげに答えました。
「他人の役に立つためです。そんなことがわからないんですか?」